アルコール中毒に必要なのは飲みたい誘惑と戦う勇気

アル中
目の前を小さな兵隊さんたちが行進しています。じっと見ていたら、どこからか湧いてきた虫が、払っても、払っても、手にくっついてきて離れません。慌てて手を振り回し、大声で叫んでいました。

恐ろしいけれど、これはホラー映画の一場面ではありません。アルコール中毒が進行すると起こる、幻覚として見えるのです。こんなものが見えるようになってしまったら、かなり重症といえるでしょう。

2013年度の厚生労働省における調査推計によると、アルコール中毒患者数は109万人もいるとのことです。しかもこの数字は治療が必要な人の数で、このうち実際に治療しているのは、なんとたったの8万人だそうです。これらの数字は、多いと思いますか?少ないと感じるでしょうか。

アルコール中毒は、豊かで平和な時代だからこそ生まれる病です。昔は酒そのものの生産量も少なくて、特別な日にしか、人は酒を飲むことができなかったのですから。今はどうでしょう。コンビニにいけば、24時間いつでも買えます。毎日を特別の日にしてしまうのは、アルコール中毒になった、あなた自身なのです。

まだ自分はアルコール中毒ではないと思われているなら、飲みたい誘惑と戦う勇気を持ってください。酒は楽しく飲むものですが、アルコール中毒になれば、もう二度と楽しく酒を飲むことはできなくなってしまうのです。

●酒好きと依存症の違い

酒好きのイラスト
一升瓶の日本酒を空けてしまう人。500mlの缶ビールを5本、飲んだ人。どちらがアルコール中毒患者だと思いますか?

酒の量だけで判断すると、一升瓶の人のほうがアルコール中毒患者のように思えますね。ですがこの人が、翌日以降はたまにしか酒を飲まず、友人や家族と楽しく食事をしていたとしたらどうでしょう。

缶ビールの人は、こんなふうに飲んでいます。朝、出勤前に1本、仕事中にも隠れて1本、退社する前に1本、家に帰ってからは2本。仕事中に飲むなんてと思われるでしょうが、この人は飲まずにいられないのです。なにしろアルコール中毒患者ですから。

一度に飲む量はたいしたことはないかもしれません。けれど体内からアルコールが消えると、不安で飲まずにはいられなくなるのです。今日は5本ですみましたが、明日には6本飲まないと、不安は消せなくなるかもしれません。

酒好きの人が一時的に大量飲酒しても、それで即座にアルコール中毒にはなりません。日常的に飲酒し、どんどん酒量が増えていって、5年から10年、気がつけばアルコール中毒になっているのです。

●晩酌は健康の助けだが?

晩酌
毎日、晩酌していますか?厚生労働省の晩酌おすすめ量は、500ml缶ビールなら1本、日本酒なら一合、ワインではグラス2杯までです。そんな量では飲んだ気がしないと思われたなら、アルコール中毒かまたは予備軍の可能性があります。

もっとも酒に強い体質の人と、あまり飲めない人とでは、同じ飲酒量でも酔いに差が出るのですから、基準の量が絶対的に健康な量とはいいきれません。毎晩基準量以上の晩酌をして、100歳を超えて健康に暮らしている人もいるのですから。

問題になるのは、この毎晩の量が、日増しに増えていってしまうことです。最初は1杯の日本酒で酔えても、体がどんどんアルコールに対する耐性を強めてしまい、いつの間にか2杯、3杯と飲まないと酔えなくなってしまいます。

自分にとっての適量を守れれば、酒はあなたの健康の強い味方です。食欲を増進し、体内を活性化し、心地よい眠りを約束してくれます。飲み足りない、もう1杯と手を出す前に、いや、ここでやめておこうと、素直に諦める勇気を持ってください。

●大量飲酒だけがアルコール中毒の原因ではない

大量飲酒している男
日本人を含む黄色人種は、白人や黒人に比べて、酒に弱い人種です。約半数の人が、遺伝的にアルコールを分解する酵素を持ち合わせていません。そのため少量飲んでも、顔が赤くなったりふらふらしたりするのです。

酒に弱い人が多ければ、アルコール中毒になる人はもっと少なくてもよさそうなものです。けれど飲酒人口の1.7%が、治療を必要とするほどのアルコール中毒となり、予備軍はさらにその何倍もいるとされています。

そもそもなぜアルコール中毒になるまで、酒を飲まないといけないのでしょう。仲間や家族と嗜む楽しい酒や、健康な晩酌の範囲にしておけば、中毒などといわれることはないはずです。

ストレスにより落ち込んだ気持ちを、なんとか上向かせたい。それにはなにが必要だろう。そうだ、酒を飲めば少しは気が晴れる。

最初はその程度の理由かもしれません。アルコールアレルギーで、まったく飲めない人は、ここでお酒ではなく別のストレス発散法を見つけます。ギャンブルや盗撮などの、悪い方向にもっていかれては困りますが、スポーツや趣味で健康的に発散できた人は大勢いるでしょう。

アルコール中毒になる人は、ストレス発散に酔いを求めます。一瞬でも嫌なことを忘れ、自分を最高の人間だと思いたいのです。ストレスの原因を作ったのは社会が悪い、あの男が悪い、あの女が悪い、自分は決して悪くない。アルコールの力を借りて、どんどん自分を正当化していき、しまいには悩んでいたことを忘れるまで飲むのです。

毎晩そんなことが続くと、アルコール中毒へと進んでしまいます。酔いをもたらす酒量は、最初の頃はそんなに多くはありません。けれど慢性的に酔った状態になると、飲み続けないといられなくなるので、驚異的に酒量が増えていきます。アルコール中毒のきっかけは、決して大量飲酒だけではありません。アルコール中毒になったから、酒量が増えているので、大量飲酒が原因のように思えてしまうのです。

●酒を飲むのではなく、酒に呑まれた状態

酒におぼれる様子
あなたの人生はあなたのものです。それがアルコール中毒になると、主役は酒になってしまいます。酒には情けなんてものはありませんから、あなたが仕事中だろうが、お金がなかろうが、頭の中にガンガンと命令を送り込んできます。

どうした、酒がないぞ。酒がきれるとどうなるかわかっているな。もっと飲め、どんどん飲め。

それまでは帰宅後毎日深酒して、気がついたら寝ていたという状態でした。二日酔いは多少あるものの、昼頃には回復していたものです。それなのに気がつくと、手が細かく震え、冷や汗が流れるようになっていました。

これが『離脱症状』です。体内にアルコールがあるのが普通になってしまったので、アルコールが切れる、つまり離脱した状態になると、震えや吐き気、集中力の低下などが起こるのです。

そこで仕事中にもかかわらず、隠れてこっそりと酒を飲むことになります。すると不思議なことに震えはぴたりと止まり、いつもの自分が戻ってきたような気持ちになれます。これなら大丈夫だ、自分はうまくやっていると思いますが、これは大きな勘違いで、他人から見たらおかしいと思われているでしょう。

さらにこの状態が続くと、『振戦譫妄(しんせんせんもう)』といって、幻聴や幻覚に悩まされる症状が出るようになります。小さな兵隊さんが歩いてきたり、存在しない虫に悩まされ、誰かが自分を殺そうとしているなどという、恐ろしい幻聴が聞こえるのです。しまいには自分が何をしているのか、わからなくなってしまうのですから、こうなるともう病院に行って治療するしかありません。

●アルコール中毒によって失うもの

健康のイメージ図
失うものが多すぎます。あなたのすべてといっても、過言ではありません。

まず健康を失います。胃をやられて吐血したり、肝臓を傷めて肝硬変になったりするだけではありません。糖尿病を発症し、腎臓をやられ、ガンになる確率もずっと高くなります。食事をしないで飲み続ければ、栄養失調になるでしょう。ふらついているので、転倒して怪我や骨折に見舞われます。

脳も萎縮するということをご存じですか?『アルコール性小脳萎縮症』、運動神経を司る小脳が縮み、歩行困難やうまく喋れない状態になります。それだけでなく大脳の前頭葉もやられ、集中力はなくなり、考える力もなくなっていくのです。

けれど恐ろしいのは、肉体の健康を失うことだけではありません。あなたをあなたらしくしてくれていた精神がやられます。酒が入っているときは、高揚した気分でいられても、酒が切れた途端に奈落に落ちていくような、絶望感を味わいます。次第にその絶望感は大きくなり、鬱病となってあなたから生きる気力を奪っていってしまいます。

そんなあなたを支えてくれていた、家族も失うことになるでしょう。配偶者、子供、両親、みんなこれまで必死になってあなたの再生を願い、助けてくれていました。けれどあなたは自ら治ろうとしません。むしろ死に急いでいるように、皆には思えるのです。

家族が、友人が、同僚が、一人、また一人とあなたのもとを去っていきます。思考停止しているあなたは、悪いのは彼らで自分ではないと思い、謝罪することもなく、ますます酒に溺れていくことになります。

酔いがさめたときに、なにが脳裏に浮かぶでしょう。こんな自分は生きる資格なんてない。生きていても、皆に迷惑をかけるだけだ。なら、いっそ、ひとおもいにと、恐ろしい考えが浮かぶのです。

自殺者の20%以上が、原因はアルコールトラブルだと思われるそうです。

自分では正しい判断をしたつもりでしょうが、本当にそうでしょうか。酒を断ち、新たに生き直す勇気は持てませんか? 飲まない勇気です。それさえあれば、再生の道は開けるのですから。

●コミュニケーションが救う、孤独の病

コミュニケーションの図
以前はアルコール中毒は不治の病と思われていました。今はそんなことは誰もいいません。断酒に成功し、社会復帰した人が大勢いるからです。

体の治療を行い、入院加療の必要がなくなったあたりから、同じようにアルコール中毒で苦しんだ人たちの『自助グループ』に参加しましょう。

もっともよく知られた『自助グループ』が、この二つです。

公益社団法人 全日本断酒連盟 

http://www.dansyu-renmei.or.jp/

日本発祥の歴史あるグループです。ここでは本名を名乗らなければいけません。グループの集まりでは、必ず発言する必要があります。家族も参加することができます。
会員になって、会費を支払います。

AA {アルコホーリクス・アノニマス}

http://aajapan.org/

アメリカで発祥、世界180国にグループがあります。集まりでは匿名でもよく、発言もしたくなければしなくていいのです。
会費はなく、会員の自主的な寄付で成り立っています。

『自助グループ』の集まりでは、皆がそれぞれ自分の体験を話します。家族や友人との会話と違って、一方的に批判されたりすることはありません。苦しかった自分の体験を、思うままに話していいのです。

あの人は俺よりひどい、あの人は私より悲惨だわ、そんな思いを胸に人の話を聞き、我が身に置き換えて新たに反省の材料としましょう。

●最後に

ここでは『アルコール中毒』という言葉を使っています。これが『アルコール依存症』と呼ばれるようになり、さらにもっとも新しい言い方では『アルコール使用障害』と名前が変わってきています。

呼び名は変わっても、病の本質に変わりはありません。酒を飲むことによってなる病、治すには断酒しかない病のことです。

一度アルコール中毒になってしまったら、二度と飲酒はできなくなります。あなたがまだアルコール中毒までいっていなかったら、ぜひこれからは酒を大切に味わって飲んでください。酔うために飲むのではありません。味わうだめに飲むのです。

アルコール中毒を経験した人は、誘惑を絶つ勇気を持ちましょう。その先に、楽しいことはたくさんあるのですから。

PS/自宅のマンションを売る事になりました。しかし、不動産業者の買い取りはいかがなものでしょうか?不動産鑑定士の方が マンションの買い取り について書いていますので参考になると思います。